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FUKUI MUSEUMS [福井ミュージアムズ]

よもやま話Yomoyama talk

風呂

法量

長径430mm×高300mm

博物館の役割の一つに資料の収集があります。ただやみくもに収集するわけではなく、収集する前に調査を行い、その結果から、収集する必要性を検討し収集されます。こうして収集していく中に、時折、使い方が判然としないものもあります。

写真をご覧ください。木でできた桶に金属製の炉があり、ぱっと見た目には、風呂に見えると思います。この資料について、便宜上「風呂」と呼ぶことにします。

この風呂は、坂井市丸岡町笹和田という集落にある農家で使われていたものです。この風呂の他にも数点の資料を一括して寄贈を受けました。収集の際には調査をした訳ですが、使用した人は既に亡くなっており、親戚にあたる寄贈者の方にも分からないものとなっていました。こういったものについては、類似した資料などから用途を考えます。

まず、この風呂の大きさ、形状を見てみましょう。小判形をした桶に、炉と蓋が付いています。高さ約50cm、長径約43cm、短径約33cmとなっています。桶の内側の高さは約30cmであり、側面の板の厚さは約1.5cmとなっています。鉄製の炉が設置されており、炉の形は砲弾形のものを上下にくっつけたような形であり、最大径は約14cmとなっています。上部と底が開いており、底には火皿を置いていたようですが、火皿は失われています。横には穴は開いておらず、上部から炭を入れて使ったものと思われます。また、桶には蓋があり、閉じられるようになっています。たがは、針金をより合わせたものが5本付いています。

さて、大きさが想像できたと思います。それでは、用途について、どのような可能性があるかを考えます。

見た目の形は「風呂」ですが、大人が入浴するには小さ過ぎます。子供が入るにしても、赤ちゃんが入るのが精いっぱいの大きさです。しかも、炉が直接触れられるようになっていることから、やけどの危険があります。

和紙製作の際に使われるテブロ(手風呂)などと呼ばれるものも形が似ています。冷たい紙料などに手をつける作業があるので、そういう時に手を温めるために使うものが手風呂でした。しかし手風呂は、これよりも小さいものが多く、丸岡町笹和田は和紙製作を行っていないので、可能性は低そうです。また、陶繼器製作にも手を温めるために、同じようなものを使うこともあるのですが、やはり、大きさと立地の面から可能性は低そうです。他にも、東京都足立区ではセリの収穫作業の際、手を温めるために使われた同じようなものがあります。 しかし、これも立地の面から可能性が低そうです。

温めるということから、渋柿の渋抜き用ということも考えられます。渋を抜いて食べる方法にはいくつかあり、干し柿にする、酒・焼酎などに漬けるという方法のほか、加熱することでも渋を抜くことができます。38℃くらいのお湯にしばらく浸けておくと渋が抜けます。この桶にも十数個の柿が入りそうです。これは可能性がありそうです。

食品を保温するという可能性では、屋台などでの使用も考えられます。湯を張って、その中へ出汁を入れたとっくり等を入れて保温するということも考えられます。

このように、使用の目的はいくつか考えられますが、今のところ、これだという決め手はありません。もし、この資料について、ご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひともお教えください。よろしくお願いします。

(福井県立歴史博物館 川波久志)
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