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FUKUI MUSEUMS [福井ミュージアムズ]

よもやま話Yomoyama talk

CIC宛書簡

これらの資料は、昭和22(1947)に福井に駐留した米軍人、ジョセフ・D・ケリ― (Joseph D Kelly)氏が、福井滞在中に入手し米国に持ち帰ったものの一部です。封書とハガキが各1点あり、それぞれ別の発信人から、当時福井に進駐していたCIC(Counter Intelligence Corps.:対敵防諜支隊)の隊長を務めていたケリー氏宛てに出されたものです。

封書(資料1)は、切手が剥がされているため消印は読み取れません。本文(割愛)は、わら半紙3枚に鉛筆で記されており、発信人が三国警察署によって調査されていることについて、自分が危険人物ではないことを釈明し、あわせて占領軍への協力を申し出る内容です。

ハガキ(資料2)は、昭和22年6月14日の消印が確認できます。発信人は書かれていません。坂井郡での選挙結果(同年4月30日の県議会選挙か)に関して公職追放対象者の当選を指摘する内容が記されています。表に英文タイプで「Letter concerning the expulsion of ******* **** & ****** ********(**** ***の追放を懸念する手紙、の意か。なお、 ***は個人名)と打たれています。CIC内で、通信の内容を示すメモでしょう。

さて、これらの宛先であるCICは、正式には“441st Counter Intelligence Corps.:第441対敵防諜支隊”といいます。昭和2010月にGHQ/SCAP(連合国軍最高司令官総司令部)の発足とともに設置されたCIS (Civil Intelligence Section:民間諜報局)に置かれ、G-2(参謀第2部)に連なっていました。原則として都道府県ごとに配置され、そのおもな任務は、占領軍への妨害行為の取り締まりと治安維持に必要な情報収集でした。実務においては、日本の警察の協力を得たとされています。東条英機の逮捕や、公職追放、レッド・パージなどでの活動が知られています。

CICの県内での活動については、福井軍政部の進駐(昭和21年4月)に先立ち201111日にジャクソン少尉以下7名が福井市に入り、福井銀行の一部を接収、調査活動に入ったとされます。しかし、現在のところその詳細は不明です。

そうしたなかで、本資料は、CICの県内での具体的な活動内容をうかがわせる資料といえます。資料1の本文には、CICが防諜の組織であること、隊長の階級が大尉であること、調査活動において三国警察署に指示を出していることが記されています。CICの活動について、当時、どの程度まで市民に知らされていたかは不明ですが、少なくとも調査対象者はそれを知ることができたようです。また、資料2からは、公職追放者の調査をCICが行っていること、CICが福井市佐佳枝上町に駐留していることが知られていたことがわかります。CICが市民による通報も、情報源として採用していたことを示す例といえるでしょう。

(福井県立歴史博物館 瓜生由起)
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